守るべき蕎麦 筒川そば

有名蕎麦打ち名人に蕎麦の産地でよいところはどこかと聞くと、長野県、北海道などいろいろな地域が出てきます。ところが「京都」という名前はなかなか耳にすることがありません。理由は諸々あるとは思いますが、元々は貧しい雑穀とされたため豊かさを求める京都文化の中に入れられないのではないかと推察できます。江戸時代に栄えた蕎麦文化は、当然東京を中心に広まりましたので、近年まで注目を浴びてきませんでした。近年では、生活習慣病対策として意義のある健康的な食べ物として蕎麦が注目され、また、その美味しさを「新たに認識した関西人」の間に一気に広がっています。

京都府北部の伊根町山間部で作られる蕎麦

元々、京都北部には蕎麦を大切に育てていた地域があります。伊根町の山間にある筒川地域がそうです。歴史もあり、豊富な伏流水と昼夜の寒暖差がなど、生育環境も整っていて実の引き締まった上質のそば粉が作り続けられています。

この蕎麦文化を後世に残そうと「筒川そば組合」が発足されました。観光にも一役買う蕎麦打ち体験ツアーを開催するなど積極的に取り組まれていらっしゃいますが、組合の方々もずいぶん高齢になられ、いよいよ継続が難しい状況になってしまいました。

香り高くうまみを感じる筒川そばをもっと多くの人に知ってもらえれば、若い力も得られるのに、と切なる思いを胸に、組合の方々は手打ち蕎麦を打ち続けています。その決意は優しい想いとなって地域全域に広がっていることがわかります。

筒川そばの特徴は、何といっても深い香り。石臼で丁寧にそばの皮を混ぜて製粉することで、小麦粉と合わせてもしっかり香るこのそばは、ガレットにもお勧めです。現地で茹でたてをいただきました。噛むほどに土の香りがし、またそば独特の食感が口いっぱいに広がります。キリっと整った空気の中、遠い未来にも、この味があり続けることを願います。

2022年10月現在

文:中村新

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