京丹波町の大きな丹波栗

日本最高レベルの栗のオンパレード。ここの栗は違う!大人気のため、早めの予約は必須です。

栗の産地として、思い浮かべる地名は「丹波」が主ではないかと思います。一口に丹波といっても、歴史的背景に伴い、兵庫県の丹波(丹波篠山)と京都府の丹波(京丹波)に分かれています。どちらも栗の生産はさかんでブランド化も進んでいます。味の違いはというと、生産者の方々は「自分の育てた栗が一番」と信じていらっしゃるので、美味しさの優劣はいたしませんが、人気という点ではどうも京丹波に軍配が上がります。上質の筑波や銀寄せという品種が主体の農園が多いのが特徴です。

グルメな生産者

船井郡京丹波町で丹波農園を営んでいらっしゃる榊原さんは、生産者としては異端児のように私の目には映ります。と言いますのも、早々ストイックなグルメだからです。
その昔、榊原さんは大阪中之島エリアで一流サラリーマンをされておられました。私は榊原さんが大阪でお勤めのころ、ちょうど北新地でフランス料理店リオンドールのシェフとして店を任されていました。何と、そのころによくお越しになられていたと聞いて驚きです。世の中は狭い。ちょうどバブル崩壊の前後で、世の中の栄枯盛衰をもろに感じていたころで、料理に悩みがきっと現れていただろうなぁと赤面の想いです。

そのころにまで記憶を遡っていきますと、確かにグルメな方々がいらっしゃいました。とても食を楽しみ、食文化を大切にしていらっしゃいました。そもそもフランス料理のようなものに心を奪われる一般の方は、相当レアであります。つまり、榊原さんは稀有の凝り性であり相当なグルメなのです。

榊原さんは丹波農園の栗を、年次進化させるとおっしゃいます。料理や使われ方を意識する生産者は多くいらっしゃいますが、これほどの力強い意思をお持ちの方は珍しい。栗ご飯やモンブランというスタンダードな範疇で多くの栗は活躍しますが、丹波農園での会話の中には料理のガルニチュール(付け合わせ)としての使い方が出てきます。それもそのはず、栗の存在感が半端なくあるからです。サイズはとにかく大きい。そして風味良し。とにかく瑞々しい栗なのです。

栗ご飯は渋皮がポイント

まずは栗ご飯にして食べてみてください。渋皮を少し残しつつ皮を剥き、日本酒かワインを少し入れた水とほんの少しの塩で炊きます。この渋皮がポイント。ここにはタンニンがたくさん含まれています。タンニンには抗酸化力という点がクローズアップされますが、実は味の深みを出してくれる大切な要素でもあります。ふっくらと炊き上がる栗ご飯にそっと忍ばせるように入る渋皮のうま味。丹波農園の栗を使うと、全く嫌味なく美味しさを感じられるのは感動そのもの。

未来に残すべき素材を見つめるテーマにとっては、メジャーすぎる京丹波の栗ですが、残してゆきたいのは、新たな価値を常に見出してくれる進化する丹波農園の栗。今後も、もっとおいしく価値ある栗が登場することでしょう。

2023/3 現在

文:中村新