ソフト塩干の魚

魚釣りの好きな人に悪い人はいない。と、釣り師は自分を正当化します。かく言う私もそう自惚れておりますが、京都府舞鶴市に正真正銘、良い人がいらっしゃいました。

ENDEAVOR(エンデバー)の代表である松田さんは、こう熱く語ります。「舞鶴の魚で舞鶴を元気にしたい」と。その熱さは半端なく熱く、なぜそこまで魚愛が強いのかと思っていたら、自らもフィッシングボートを持つ根っからの釣り師だということが分かりました。納得です。さらに彼の釣り好きであることが分かりました。なんと、前職が大阪の大手釣具屋。中途半端な釣り好きではないことがよくわかりました。釣り師は水族館が好きで、身近な魚が多い近海魚の展示水槽が大好き。真鯛は岩場の周りをグルグルと回遊、カサゴは底でじっとしているところを見て、ワクワクします。おそらく松田さんもそうなのだと確信しました。

そんな釣り師が故郷のためにと立ち上がったのが、舞鶴湾周りで獲れる魚を利用した「ソフト干物」製造と販売。鮮度の良い魚だから美味しいこのソフト干物は、専用の乾燥庫があってこそ成り立ちます。松田さんはこの機器メーカーの協賛をとりつけ、独特なノウハウを構築していました。

例えばスズキ。少しクセのある魚ですが、鮮度を保ち、放血から神経〆という手順を踏めば美味しい魚に大変身。それを手際よく処理して機械乾燥させてソフト干物に仕上げます。ソフト干物の特徴は何といっても、魚の良い部分を強調できる干物を作ることができることです。皮の香りがおいしい根魚、骨の周りがおいしい回遊魚、それぞれの良さを切り身の状態を工夫することで表現できるのです。

松田さんの夢は、大勢の消費者に舞鶴の良さを、ソフト干物を通じて知ってもらうこと。でもどうもそれだけではないようです。魚の可能性をどんどん開拓して、観光ニーズの掘り起こしや、地域産業の振興につなげたいという気持ちが、彼の表情から見て取れました。
使ってあげることで、地方産業は様々な局面で活性するという、私たちの取り組みに最も合致する生産者さんです。皆さん、応援してあげましょう。

2022/9/10 現在

文:中村新