食用米から生まれる日本酒
食用うるち米を日本酒に育てる稀有な酒蔵。洋風酒屋など、ワインと併売が生きるお酒たちがそろい踏み。
国内でも珍しい完全食用米で、数種類の酒を造り出す白杉悟さん。日本酒の概念を覆す程の食用米での日本酒作るこだわりは唯一無二の存在です。米の個性を引き出した日本酒を造りたい、そんな思いが伝わってきます。しかしそこには、果てしないご苦労もおありになりましたが、きっかけはヒラメキからでした。白杉さんは、その話を私達に話してくれました。
白杉酒造 お店の正面
コシヒカリでできた「丹後のヒカリ」
白杉さんは、元々京都市内のご出身。京都丹後市にはおじさんが白杉酒造の杜氏をされていました。その白杉酒造に入ったのは、28歳の時。醸造の勉強をしながらその5年後に、白杉酒造11代目オーナー杜氏としての白杉さんの物語はスタートしました。白杉さんは元々白米を好きではなかったとのこと。しかし、京都丹後の生産されたコシヒカリを食べた時に、なんと美味しいお米かと思い、こんなに美味しいお米ならばこの米で日本酒を作りたいと強く思ったことが、食用米で日本酒をつくるきっかけになりました。もちろん、日本酒の原料になる米は、酒米山田錦が基本。酒米山田錦は、粘りが少なく、タンパク質が少ないので、技術的にも安定し、味わい深いお酒ができます。しかしながら、その正反対の性質をもったコシヒカリでの日本酒の開発に着手したのです。そこには、沢山の失敗もありましたと少しハニカミながら失敗談も話してくれました。
一品種から一つの日本酒 〜 それぞれのストーリー
食用米を水に漬け込む様子 蒸米を放冷し、麹造り、手母造り、掛米用と進みます。 蒸した米を麹にする工程「製麹(せいきく)」 麹菌を米に丁寧に付着させる
白杉さんが製造に使用される米の品種は、コシヒカリ、ササニシキ、ユメゴコチ、ミルキークイーン、ニジノキラメキ、カルナローリ(国産)の7種類です。1品種で一つの日本酒を製造されます。また、白杉さんの製造される日本酒には、一つ一つストーリーがあります。(写真②)
写真②白杉酒造の日本酒のラインナップ(一部) ラベルのデザインも白杉さんが手掛ける。左から 丹後のヒカリ、ブラックレーベル、CHIMERA、金シャリ、URANISHI、ブラックスワン、ブラックスワンⅡ、梅酒
●ササニシキを使用した、金シャリ、銀シャリ
寿司職人は、寿司米にはあっさりとした味わいのササニシキを使用することが多いと言われています。その特性を使用してお寿司など料理を引きたてる役割を担うようにと作られたのが、銀シャリ、金シャリ。
●ミルキークイーンを使用した、ブラックスワン
ミルキークイーンは、もち米のような甘みと粘りはあるの特徴。その独特の甘みを生かすために、白麹と黒麹を使用して製造。低温で長く発酵しておどり狂わせる。なおかつ通常使用しない黒麹を使用することから、ブラックスワンと商品名をつけました。
●コシヒカリを使用した、CHIMERA(キメラ)
米の品種は、コシヒカリを使用ですが、この日本酒の特徴が、3種の麹を使用し、尚且つ酵母も3種をブレンドして組み合わせて作っています。3×3の複雑な味わいが重なりあってできたCHIMERAは、一見個性的な白ワインのような味わいの中に力強さのある日本酒です。この商品の名前の由来が、ラベルのロゴにも現れています、ヤギ、ライオンの頭を持ち、しっぽは蛇とギリシャ神話に出てくるキメラをイメージ、3×3の生き物の表情を持つという意味でキメラとつけられました。
銀シャリ 金シャリ CHIMERA
全て京丹後の地元の食用米を使用し、地域を守り続けることも同時に行われている白杉さん。そこにも未来を感じさせられます。(写真③)
写真③白杉酒造で酒を造るスタッフさん(左2人)、白杉社長、白杉さん(奥様)
完全食用米で作られている数種類の日本酒は、若い世代にも飲みやすくこれからの日本酒業界を支えるもう一本の軸になるようにも感じました。
この個性豊かな食用米の日本酒は必ずファンがつくこと間違いないと確信します。
業務用で継続的に使用するお酒の一つとして、お店と共に歩んでもらいたい日本酒です。
2022/10/5 現在
文:金森幸子
白杉酒造の商品は公式サイトよりご購入いただけます。