結(ゆい)が産みなす小畑味噌
元気なお母さんたちが集いながら作る味噌は、ほのぼのとして、本当においしいです。使い続けたいお味噌です。
助け合いで結ばれる地域が美味しいお味噌を作ります
古くから地域を守り助け合う仕組みがあります。都会のマンションでは管理組合という名前がそれにあたるのかもしれませんが、地方のそれとは大きく異なります。お金という尺度を、心の価値に置き換え、お互いに忙しい時期を共有して苦楽を共にする仕組みです。沖縄では「結」(ゆい)といわれ、今でもちゃんと機能しています。
京都府綾部市小畑町。清流が流れるのどかなところですが、言い換えればどこにでもある集落です。ただ、この地で生まれる小畑味噌を食べると美食意識がモリモリと膨らむのです。ほんのりと香る糀の香りとまろやかな塩分は、ほどよい熟成を保った証拠。
お味噌の美味しい地域はたくさんありますが、こちらのお味噌は心の中にしみ込む味なのです。味をつかさどるのは何といっても地元の水。自らが育てる米や大豆と仕込みに使用する水が同じであることは大変意義のあるもので、意外にもそこまで自給自足を徹底できている地域は多くありません。
作業場の前には空山の名前の由来にもなった山の風景が見られる
寝かせている味噌を拝見させていただきました
シンとした倉の中に丁寧に覆いをされた樽が並びます。味噌は静けさと共に熟成をするという話を聞きますが、正にそれです。この素晴らしいお味噌を作っているのは、地元の主婦だけで構成される空山グループ。何故、その名前にしたのですかと尋ねると、空と山しかないから・・・、というごく普通の回答。しかしこの外連味のなさが地方の良さなのです。
空山グループの皆様(撮影の日は4人で作業。通常は交代で6人が所属)
仕込みの作業は簡単ではありません。ちょっとした大手の味噌工場と同じくらい厳格に作られていて、作業そのものにプロの気迫を感じます。それほど緻密に作られているのにもかかわらず、今日と明日の仕込みをする人が用事などの理由で異なっていること。
「出来る人がやればよいんです」、そう話す姿に、沖縄の結を思い出しました。
1年熟成した味噌をパックに詰める作業 業務用、学校給食用に、樽での納品も可能 パックに詰めた味噌の最後の仕上げ 小畑味噌の完成品(小売用のパッケージ)
未来を作り続けるということは、こういう素朴な守りあいがベースにあるのです。空山グループは最高のチームプレイを重ね続ける名グループに違いありません。これからも小さな知恵を出し合いつつ、年毎に増す美味しい味噌を作り続けてほしいものです。
2022/10 現在
文:中村新