京丹波の恵み くろ丹波

業務用として使いやすく、そして何より小麦粉との相性が抜群の備えておきたい卵です。

高騰する卵(2023年3月現在)の価格。鶏インフルエンザ、ウクライナの戦争、地球の温暖・・・。様々な要因が鶏の世界を暗く覆っていますが、そういう事柄に対して元気に立ち向かう鶏卵生産者が京丹波にあります。その名は「みずほファーム」。創意工夫でユニークな卵を求めやすい価格にコンシャスして販売されている京都を代表する養鶏者の桑山直希さんです。
リリースしている代表商品は、葉酸たまご、さくらたまご、くろ丹波、京乃雅など。どれも飼料に工夫をほどこし、特徴のある製品となっています。

鶏卵は、与える飼料によって味や成分が大きく異なってきます。卵黄の色の差は自由自在、栄養成分も強調したい部分を反映することが可能な「作り手の想いが形になる食べ物」。
そしてその特徴を左右する飼育方法も様々で、放し飼い(放ったらかしの飼育で、餌のコントロールもなし)、平飼い(ケージに入れず定められた大きさで運動できる)、ケージ飼い(小屋の中で完全管理される)の3種類があり、日本の95%がケージ飼い。価格は当然、平飼いが高価で、ケージ飼いは効率的なため価格も安く、安定した生産が可能です。

私は長く食の世界にいますが、恥ずかしながら卵の優劣をつける能力がありません。といいますのも、どの卵も鮮度がよく元気な鶏であれば、それほど大きく味が変わらないと感じているからです。もっと鋭い味覚の方がいらっしゃるので強くは言えませんが、黄身のトロッと感や与えたエサの香り(柑橘など)にこそ差はあれど、味の違いは判りません。(生産者の方々、すみません)
そこで、長年養鶏にたずさわっていらっしゃる方にその話をすると、「味は科学的にもほぼ同じで、風味や栄養成分は異なる」という回答が返ってきて、ちょっとホッとした思い出があります。

そんな私的常識の中で、新発見が!それはみずほファームの「くろ丹波」という卵をホットケーキに使用したときでした。丹波黒という黒豆を飼料に加えたこの卵。なんと小麦粉との相性が抜群なのです。グラニュー糖と国産小麦粉をつなぐ「くろ丹波」は、「そのものの味は変わらなくても、相性という特徴があったのだ」と感じさせてくれるもの。うっすらと香る豆の風味が粉っぽい香りをコントロールしていたのです。
求めやすい価格であり、安定した仕入れ量も可能で、お菓子専用卵として売ってもよいのではないかと思うほど。
次は葉酸たまごがどの料理に合うのか、というチャレンジもワクワクしながら考える今日このごろです。

2022/12 現在

文:中村新