久美浜で熱い情熱を注がれる牡蠣

未来を見つめる牡蠣養殖界の若きホープ

周年出荷できる殻付き牡蠣に情熱を燃やしています。

皆さんは、内水面(ないすいめん)という言葉をご存じでしょうか?
海面に対して、内水面という位置づけで、沼や池、川や湖がそれに含まれます。基本的に真水のところなのですが、日本でたった2か所だけ海なのに内水面とされるところがあり、
一つは与謝海、もう一つは久美浜湾、何と2か所とも京都府にあります。ここでは厳しい法律の下で漁協が管理を行い、資源や環境を守りながら漁業が営まれています。共通するのは汽水と呼ばれる淡水と海水が入り混じったところということ。川の影響を大きく受けるため、栄養価が高いという良い部分も多くあれば、大雨や干ばつなどで塩分濃度が極端に変わるというマイナス面もあることが特徴です。いずれにせよ、そこではこういう環境下で力強く育つ生き物の特性をうまく生かした漁業を営むという順応性が要求されるわけです。

この地で牡蠣養殖家をされている豊島淳史さんは、正に久美浜湾のエキスパート。内水面ならではの規制に準じながら、牡蠣養殖に古くから伝わる養殖技術から脱却した方法を常に考えておられます。

価値ある殻付き牡蠣

一般的に日本の牡蠣養殖は「むき身」での販売を目的にする垂下養殖(ロープに吊るして縦長に飼育)が主流ですが、これらは型揃いが必要な殻付き牡蠣には不向きなため、シングルシードというひとつひとつバラバラに大きくしてゆく方法で、殻付き牡蠣としての価値を高めています。

日本の牡蠣の未来づくり

豊島さんが目指すのは、「殻付き牡蠣の中で更に上質で甘い牡蠣」。そのためには既成概念を取り払うためフランスの養殖技術を取り入れ、どこにも負けない美味しい牡蠣を作ろうとしています。

目的は「貝柱を大きくすること」。噛めば噛むほど甘さが増す貝柱を大きくするには、貝の運動量を上げることになりますが、そのための方法に今後は注力するとおっしゃっていました。その成果が出るのは来年の夏以降。日本の牡蠣の未来づくりが久美浜で始まっています。

2022/11 現在

文:中村新

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