冷凍食品の歴史と冷凍ミールキット

文 キッチンエヌ中村新

 冷凍はドキドキもののご馳走

もう何十年も前の頃になりますが、小さいころ、冷凍のエビフライは驚きのあるご馳走として登場しました。
何といっても驚きは「冷凍のまま揚げる」こと。
とても熱い揚げ油に凍ったままの衣付き海老をチャポンと放り込むその様子です。
「熱いものに凍ったものが入っていって大丈夫なの?」。
その疑問はいつしか「当たり前の姿」となって今に至っています。
いつ、それが当たり前になったのかは覚えていませんが、世の中の便利というものはそういう理屈抜きで体に浸透してくるものだと、スマートフォンを片手にしながら最近つくづく実感する今日この頃です。
そして何よりインパクトがあったのは、それがご馳走だったこと。
海老フライは上質の洋食店でしか食べられないものでした。
それが忙しい家事の中、母親がさっと作ってきたときは、思いがけないほどのうれしさで美味しく食べた記憶があります。
馳走とは「世の中を駆け回ってかき集めること」を指しますが、もはやスーパーマーケットを馳走することでこんなに美味しいものが手に入る時代になったのです。

 冷凍の進化

冷凍食品は利便性と美味しさを叶えたものですが、それはとても歴史のある冷凍技術の研究によって成り立ちました。
2021年現在、マグロはその赤身を保つため-60℃で保管されています。
その温度であれば長期間保管しても鮮やかな赤色が消えないことが理由です。
一般的な冷凍食品の保管は-18℃。このように冷凍と言ってもその素材や用途によっていろいろ温度に変化がありますが、それをコントロールできる機器があって初めて達成されるのが冷凍食品や冷凍加工品です。
では簡単に冷凍方法の種類についてお話しておきましょう。

 冷凍の種類とは

一般的な家庭用冷凍庫でゆっくりと凍ってゆくものを「緩慢冷凍」と言います。
それに対して-30℃を下回る方法で素早く冷やし固めることを「急速冷凍」といい、これらが冷凍食品と呼ばれています。

 「緩慢冷凍」での食品の変化

「え?緩慢冷凍した食品は冷凍食品ではないの?」
そうなのです。緩慢冷凍で出来たものは「冷凍加工食品」として冷凍食品と一線を画す食べ物です。
その理由は、冷凍になってゆくスピードの違いにあります。食べ物が凍ってゆく際、氷塊(ひょうかい)というものが出来ます。
簡単に言うと食品の中に含まれる水が凍ったもので、これは時間をかけてゆっくりと冷凍すると大きくなります。
反対に素早く冷凍すると氷塊は小さいままで落ち着きます。大きくなった氷塊は困ったことに食べ物の細胞膜を破壊して、いよいよ自由奔放に動き回ります。
冷凍中はじっとそのままの状態が保立てるとおもいがちですが、そうではありません。実は以外にも緩慢冷凍は著しく変化しています。
冷凍庫はいつも同じ温度とは限らず、霜取りなどで冷却機を止めたり、冷凍庫の扉を開けたりする際、大きな温度変化を受けます。それに従って氷塊も大きくなったり、また無くなったり(乾燥)しますので、食品に対して味の変化を与えます。
余ったからと言って家庭で冷凍していた牛肉をまな板の上で解凍すると、赤いドリップがたくさん流れ出て気持ち悪くなった経験ありませんか?きちんと急速凍結されたものであれば、それほど多くのドリップが出ませんが、緩慢冷凍だと、細胞膜をつぶして大きく育った氷塊が自由奔放に流れ出てしまうのです。
当然そうなると牛肉のジューシーさを失い、調理を施しても美味しい料理にはなりません。

 「緩慢冷凍」でのメリット

私は、緩慢冷凍が悪いとは思っていません。
カレーやシチューのようなものは、冷凍すると味がまろやかになり、口当たりのよい料理となります。
これを「冷凍中に育つ」と勝手に呼んでいます。
冷凍中に育つ素材や料理は「緩慢冷凍」にしても良いと思います。

 「急速冷凍」での食品の変化

一方、急速冷凍であれば、氷塊がとても小さいため細胞膜を破壊することがないため、解凍しても遜色なく使えます。
このように冷凍方法の差は、料理にとって大きな変化をもたらすのです。
鮮度やその状態をきちんと保つためには「急速冷凍」へというように、使い分けがとても重要となっているのです。
ではその冷凍するための機器についてもう少し掘り下げておきましょう。

【急速冷凍の種類】
 急速凍結には大きく3つの種類があります。

・-30℃の液体アルコールにドボンと漬ける「リキッド凍結」。
・-35℃位の冷たい風を庫内に循環させて冷やし固める「ブラスト凍結」。
・凍結時に磁力と電磁波を使用する「磁力凍結」。

厚さがあまりなく、お刺身や煮物などの惣菜をパックしたものはリキッド凍結、
形が不ぞろいな場合やパックしづらいものはブラスト凍結、
寿司やお菓子のようにデリケートなものは磁力凍結が適しています。
それぞれの特性を生かすことで、より良い冷凍食品を作ることが出来ます。
ただ、これもそれぞれの価格が比較的高価なため、食品加工工場が所有するとなれば、どれか1種類、あるいは2種類を備えるのがやっと。
そのため必然的に、作られる食品が偏るため、販売する商品ジャンルが絞られることになっています。

 冷凍食の未来「冷凍ミールキットは働く女性の必需品」

これからの冷凍食品は、これらの急速凍結機器を利用した「鮮度と美味しさ、そして栄養素をまるごと長期間保存」という目的に、美味しいという大切な要素がつながりつつ進化を遂げるようになります。
最も顕著なのは、完全完成型から「ミールキット型」への移行です。
今、一般的に販売されている冷凍食品は、ほぼ完成形です。電子レンジでチンするか、揚げる、あるいはそのまま茹でるなどで仕上がる手間いらずものが重宝されていますが、これからは「ちょっと手間をかける」ミールキットに重点が置かれます。
特に日本はその傾向が強いでしょう。理由は、気候変動による気温の上昇です。
 気温が高くなることと、ミールキットが食生活を支えることに関連はあるの?とお思いでしょう。しかしこれは大ありなのです。
 日本は今、100年毎に0.77℃、気温が上昇し続けています。と同時に日々乱高下しています。この上昇は小さいと思いがちですが、実はボディブローのように住まいする人間を追い詰めます。ここに地震や台風という自然災害の危機にも脅かされていますので、勢いその変化についていかなければならないという危機感がとても強くなってしまいます。
気温が高い地域、亜熱帯や熱帯地域の文化圏の特徴に「女性の就労率の高さ」がありますが、今の日本はこの亜熱帯化が進み始めているがゆえに、既述の危機感と重なり、女性の就労意欲が高まります。
旦那や男が役に立たないという面もありますが、元来、人間というのはそういう生き物です。
 毎日、一生懸命働くと家事に手を抜きたくなるのは当然ですが、と言って、貧相な食事を継続するというみじめさを許すだけの堕落もありません。
プライドの生き物としては、それらを上手く両立させながら暮らす「これで良い満足生活」を望んでいます。
そこにミールキットです。
惣菜ではなくミールキット。惣菜は自分の旦那さんに食べさせるもので、ミールキットはお友達におもてなしをするパーソナリティの発揮。
存在の格が違います。
いつでも冷凍庫に備わっている半調理冷凍食品は、少しだけ材料を付け足して仕上げますから、同じ冷凍品を使用しても毎回違う仕上りをします。
ここがポイント。付け足す材料を選ぶ動機は使う人の気持ちそのもの。
つまり個性化された食事をいとも簡単につくることができるのです。
 例えば魚のバター焼きというミールキットの場合、その横に添える付け合わせが、パセリなのか、トマトなのか、ブロッコリーなのか、で、全く印象が異なる仕上げになり、手の入れようによってはどれだけでも高級なものに仕上がっていきます。
残念ながら完全仕上り品の冷凍エビフライではそうはいきません。
このように、世知辛い世の中に頑張って生きる人々の気持ちと体力を支えるのも冷凍ミールキットの良いところといえましょう。

 冷凍ミールキットMUKUMONOは、未来の笑顔作り役

自らの幼少期、新型コロナウイルスの流行であったらどうしただろう・・・。
そう考えることが増えました。両親は働きに出て、子供は部屋で待つ時間ばかりが目立ち始めます。
せめてそんなとき、夜遅くにかえってササっと作ってくれたミニ豪華な食事が、食卓をパッと明るくするのは間違いありません。会話も増え、笑顔も多くなります。
 次の時代の食卓に、美味しい団らんをもたらすのは、冷凍ミールキットといえるのではないでしょうか。